「わたしの時代の幕開けから100年後、果たして記念すべき年となっているだろうか」… フィリップ・ド・ロスシルド男爵は1981年に出版された自叙伝『Vivre la Vigne(ぶどう畑に生きる)』の中でこう問いかけています。
シャトー・ムートン・ロスチャイルドは2022年ラベルの作品制作をフランス人アーティスト、ジェラール・ガルースト(Gérard Garouste)に依頼しました。シャトー運営がフィリップ男爵の采配に委ねられることとなる、男爵時代の幕開けから100年。2022年は記念すべき節目の年です。1988年にこの世を去られた男爵の願いを尊重し、これまで100年の歴史を称える作品となりました。
1922年、フィリップ・ド・ロスシルド男爵がムートン・ロスチャイルドの運営のトップに立たれました。シャトー現代史の礎が築かれたこの年を記念して、ジェラール・ガルーストは独自の象徴的かつ幻想的な手法でムートン・ロスチャイルドに秘められた意味と価値を描き出しました。作品中央にはムートンの正面ペジメント。その両脇には男爵の肖像画と、かの有名な牡羊が飾られています。
ジェラール・ガルーストは作品を制作するにあたって、ジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスシルドとの対話、そして男爵を捉えた貴重な写真の数々から多くのインスピレーションを得たといいます。アーティストのメモ帳に残された下絵の数々。牡羊をともなった男爵の肖像画、ペジメント、ぶどう… 象徴となるモチーフは即座に定まりました。ガッシュで描かれたこの作品には実に自然に「Hommage au Baron Philippe(フィリップ男爵へのオマージュ)」のタイトルが添えられました。
「ジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスシルドとの対話は実にインスピレーション溢れるものでした。多くの写真や絵画を拝見しながら、彼のお祖父様が辿った人生に強く惹きつけられました。そして、フィリップ男爵の顔立ちに心を奪われました。(中略)描くべきモデルに迷いはありませんでした。その優雅な立ち居振る舞いは、わたしを魅了するに十分でした。抜群にエレガントで、何事に対しても精力的で。表情には常に自信が満ち溢れ、同時に茶目っ気も失わない。男爵の魅力のすべてを肖像画に表現することに努めました。
ギリシャ神話だけでなく聖書の世界にも登場する牡羊がシンボルマークとして選ばれた、この点に強く興味を引かれました。正面ペジメントはムートン・ロスチャイルドの目印です。そして、ぶどうの実。ぶどうは男爵が残した名作、優れたワインの象徴に他ならず、忘れるわけにはいきません。壮大な歴史とワインへの畏敬の念、そして、恵み豊かな自然へのオマージュとして、このラベル作品を描きました」ジェラール・ガルースト
ジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスシルドは、シャトー・ムートン・ロスチャイルドの共同オーナーであり、同シャトーの文化芸術事業を担当。新ヴィンテージのラベル作品を制作いただくアーティストとの関係構築をマネジメントしています。
「ジェラール・ガルーストの作品はひとつの紋章として捉えることができます。つまり、解読作業を要します。牡羊、シャトー・ムートン・ロスチャイルドの正面ペジメント、フィリップ男爵の肖像画… これら3つの強力なモチーフで構成されています。
すべてのはじまりはひとつの出会いから。フィリップ男爵とペジメントの出会い。ペジメントはムートンの目印。この出会いの中に生まれたのが牡羊というシンボル。いずれをも超越し、いずれをも象徴する。フィリップ男爵の星座でもあり、ムートン・ロスチャイルドの直訳であり、みなぎるエネルギーと活力の象徴でもあり。(中略)この作品ひとつでメタモルフォーゼの物語を伝えているかのようです」