古干(グー・ガン)は、1942年、湖南省長沙市生まれの中国人画家・書道家。一時期は健康問題が原因で中断せざるを得なかった美術の勉強を、60年代に北京にて再開し修了する。首都公的機関での就職が約束されていたが、文化大革命により職を失い、その後10年間は印刷所の作業員として働くことを余儀なくされた。毛沢東の死去、そして1976年、「四人組」の失脚・逮捕を受け、再び美術の世界へと返り咲いた。その当時、古干は、当時の中国ではほとんど無名であったカンディンスキーやクレー、ミロの作品と衝撃的出会いを果たしている。
1985年に北京で催された「近代書道展」発案者のひとりとして活躍。1987年および1989年と2回ドイツを訪問し、西欧諸国においても画家としての知名度を高めていく。1993年、ケルンにて彼の作品の大規模展覧会が開催される。現在は北京に暮らし、「中国近代画家・書道家協会」の会長を務める。古干の作品は、今では中国国内はもちろん、西欧諸国の多くの美術館(大英博物館、ケルン美術館など)で展示されている。
もともとピクトグラムである中国書道は、紀元前2000年から現代に伝わる伝統芸術である。言語であると同時に芸術作品であり、書かれる言葉が意味を成す過程には、常に文字としての視覚的な美しさが追求されてきた。古干はこのような伝統を継承しつつも、根本な改革を加える。かくして、書道に色彩を導入し、伝統が重んじる均衡と数々の掟の束縛から開放し、絵画の域へと達した書道作品は、装飾美術としての地位を確立したと言える。
今ではもちろん書道の大家として、また、書道芸術の主要理論家として知られ(The Three Steps of Modern Calligraphy、1990年)、中国の伝統文化と西洋抽象美術の橋渡しとなる書道作品を制作し続けている。
1996年ムートンのラベルには、5つのイデオグラム(表意文字)が描かれている。いずれも「こころ」を意味し、それぞれ異なる色彩と描線で表現されている。強靭さと繊細さが重なり合った構図をアーティストは「心と心」と名付け、普遍の調和に築かれた信頼関係が表現されている。
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