

アンディ・ウォーホル(1930年〜1987年)は、米国フィラデルフィア生まれ。当初は広告イラストレーターとしてデビューし、「平凡なものにオリジナリティを持たせるアート」と彼自身定義するポップアート、同分野におけるリーダー的存在となる。1962年には、代表作のひとつである「コカ・コーラ」ボトルを描いた作品(シルクスクリーンプリント)を発表。続いて缶詰スープ「キャンベル」、トマト製品「ハインツ」をモチーフとして採用。その後も同じ技法で「スター・システム」の有名人ら(マリリン・モンロー、リズ・テイラー、ジャッキー・ケネディ)を描く。大衆の関心を広く集めるトピックを題材として選び、消費社会を嘲弄した。大量生産で制作されたオブジェ。そこに描かれる有名人の表情は、あらゆる雑誌に掲載されてワンパターン化した顔で、そのキャンバスには虚無感が漂う。それ自体が単なるオブジェと化してしまう。いわば象徴的破壊行為の対象として自身の肖像画をも取り上げ、メイクを施し、平面化し、自らをオブジェ化する。アイロニーに満ちた作品である。彼のアトリエは「ザ・ファクトリー(工場)」と命名され、社会のアウトサイダー的若者らが多く集った。アメリカの正直な労働者の、絶対的正直さの、絶対的アンチテーゼ。
アンディ・ウォーホルが手掛けた1975年ムートン・ロスシルドのワインラベルには、彼のいつもの手法で、モデル人物の古風な写真が用いられている。ユーモアと厳格さ、フィリップ男爵の異なる表情が並置されている。