

ジャン・カルズーは、1907年生まれのアルメニア出身アーティスト。当初は建築家として学を修める。彼の絵画作品が評価を受け始めるのは、1945年以降である。その後、バレエ舞台美術を手掛け、その分野で名声を博す。1953年には、ローラン・プティの「狼」、1970年にはパリ劇場で上演された「ラ・ペリコール」を手掛けている。彼の芸術には、人物やモチーフを描く際に、正確な幾何学的表現による遠近法と、もつれた描線とのコントラストを利用する技法がベースにおかれている。それにより、たちまち特有の詩的世界があらわれ、客観的現実を凌駕し、幻想的な広がりが作品に加わる。
1954年のラベルに、カルズーは「運命の車輪」のアレゴリーを描いている。いくらムートン・ロスシルドとはいえ、どれほどまで自然からの授かり物が予知不可能なものであるか。