

ジュゼッペ・ペノーネは、1947年ガレッシオ(ピエモンテ州)生まれのイタリアを代表する彫刻家。現代美術界で最も独創的アーティストのひとりとされる。トリノの美術学校で学び、制作活動初期から「アルテ・ポーヴェラ」の主要人物として知られる。農業を営んでいた父親の影響で、木々、葉、トゲ、土、根…、植物世界に見られるフォルム、マチエール、そしてそれらの色彩にとりわけ高い関心を寄せた。
自分は自然を前には単なる「現像スタッフ」でしかないと語っていた。ムラージュ、フロッタージュ、採型といった技法を用い、描写のきまりごとには一切則さないかのように、理解の対象となるオブジェに限りなく近いところに作品を置く。同時に、不確定かつ脆弱で、同志であり敵でもある自然に、自らの意思を押し付ける。ペノーネの彫刻作に人間の身体が頻繁に描かれるのはそのためである。ブロンズ、大理石あるいは石といった、長きにわたって作品として残る素材を使用する傾向もその表れである。ペノーネの作品は多くの有名美術館に展示されているが、今でも進化の途上にあり、2004年には、記念すべき回顧展がパリのポンピドゥー・センターで開催されている。
2005年ムートン・ロスチャイルドのラベルを飾る作品には、ヴィニュロンの「main verte(草木を育てる力のある手)」が描かれている。ブドウの葉が生き生きと伸びていく様子。飲み手の開かれた指。ムートンが注がれたグラスに触れると、その手はすっと閉じられるだろう。