

サルバドール・ダリ(1904年〜1989年)は、絵画の作風はもちろん、その言動においても、シュルレアリスムにおける巨匠である。今世紀を代表する伝説的人物であり、超絶テクニックと豊かなインスピレーションを誇るアーティストである。カタルーニャに生まれ、キリコの「形而上絵画」と出会い、1928年には、キリコ自身からシュルレアリスト運動に誘われる。後にダリ自身がシュルレアリスムを先導するも、1931年には破門されている。ユーモアとホラー、エロティズムとミスティシズム(神秘主義)、学術的模倣と妄想じみたヴィジョン。ダリの作品はいかなる枠組みからもはみ出てしまう。シュルレアリスムは、逆説的に、この天才画家(本人もこう自称する)をもって最高の教師を得ることが出来たと言える。
ここにも逆説的事象がひとつ。1958年ムートン・ロスシルドのラベルに描かれた優しい風貌の羊。この羊には、子供が描いたデッサンに通じる魅力がある。