

アメリカ人画家ロバート・マザウェル(1915年〜1991年)は、まず哲学を学び、その後、絵画制作へと転じる。1940年代、シュルレアリストとして短期間活動した後、抽象表現主義へと傾倒し、ロスコやポロックとともに作品を発表した。彼の絵画制作は知的学術研究と一体であり、「哲学する画家」マザウェルは、1948年、マックス・エルンストに関する研究論文を出版。また、1952年まで、ダダイストによる絵画、デッサン、資料をまとめた「Documents of Modern Art」の編集にあたった。その頃には彼の芸術は十分に成熟し、 抽象とカリグラフィーの狭間で揺れる、不気味などっしりした黒いフォルムが執拗に反復される作風を特徴とした。
1974年ムートン・ロスシルドのラベルにと制作された作品は、マザウェルの絵画芸術の好例と評される作品である。そこに描かれた絵からは、ニューヨーク・スクールの中心アーティストのひとりが発する、創造的エネルギーの全てを感じることが出来る。