

スイス人画家ハンス・エルニは、1909年、ルツェルンに生まれた。当初は抽象画を制作していたが、人道思想の影響を受けて転向を図り、戦後には左派芸術家としての活動に専念する。しばしば古典神話および現代神話の登場人物をモデルとしたアレゴリーを用い、エルニの象徴的レアリスムは、肉感のある強靭なフォルムと、時に幾何学的原寸図を思わせる非常に精緻な描線との融合を特徴とする。
1987年ムートン・ロスシルドのラベルには、肖像画アーティストとしての豊かな才能が見事に花開いている。モデルをシンボルとして描く画風で、エルニはフィリップ・ド・ロスシルド男爵の放つ燦然たる豊かなエネルギーを見事作品に捉えている。男爵への敬意がこめられた作品である。