

ロベルト・マッタ・エチャウレン、通称マッタは、1912年生まれのチリ出身アーティスト。ル・コルビュジエの片腕として、当初は建築家として活動していた。1935年、シュルレアリストの活動グループに加盟する。戦中はアメリカ合衆国に住まいを移し、タンギーおよびデシャンからの影響を強く受ける。1948年にパリへと戻り、ユネスコ本部の大フレスコ画を制作している。マッタは、現代に潜む暴力性や機械化社会に警鐘を鳴らし、そのために夢幻的内省を放棄する。それ以降は、半身がロボットあるいは操り人形と化した人間たちがうごめく、由々しき事態の世界を描くようになる。
痛めつけられ苦しめられ、1962年ムートン・ロスシルドのラベルに描かれたブドウ樹は、そんな状況下でも果実を実らせてくれるようである。画家マッタは、「Son tendre velouté séduit les plus rebelle…(そのビロードのような優しさは、固く閉ざされた心をも開かせる)」との一文を書き添えている。