

レイモン・サヴィニャックは、1907年、カフェ・レストランを経営していたアヴェロン県出身の両親のもと、パリで生まれた。早くから風刺漫画で頭角を現した。
1933年、初の転機となる出会いがあった。高名なポスター画家カッサンドルとの出会いである。カッサンドルは、「アリアンス・グラフィック」事務所のアシスタントとしてサヴィニャックを採用し、業界への扉を開かせた。
1943年、ロレアル創業者ウジェーヌ・シュエレール所有の「Consortium Général de Pubicité」社にイラストレーターとして就職する。そこは4年で退職し、同業「Villemot」社の仕事を受けるようになる。1949年、メゾン・デ・ボザールで開催された両社共同展覧会で、シュエレールは自分の会社で以前働いていたサヴィニャックの作品「モンサヴォン社の牛乳石鹸」ポスターを見つけ、すぐさま彼の作品を出版する。それは撃的な成功をおさめ、たちまちサヴィニャックは世に躍り出た。1951年、Grand Prix de l’Affiche(広告グランプリ)を受賞。それを皮切りに数多くの賞を獲得し続ける。それ以降、Bic社からAir France社まで、Dunlop社からPepsi-Colaまで、フランス国内外大企業の広告デザインを手掛ける。
「Garap」のポスターに見られるように、広告を皮肉るユーモアも持ち合わせており、環境問題やヒューマニズムをテーマとした制作活動にも力を注ぐ。1982年からノルマンディーに暮らす。
「見せるものを減らせば、そのぶん伝わるものは増える」とサヴィニャックは言う。描線の明快さ、ヴィヴィットでコントラストのある色彩、シンプルなデザイン、すかさず肝心な部分へ機知に富んだ視線を向ける。同時に、彼のデザインはギャグの突発性を備え、スローガン成功の法則を実践してみせる。具象的で詩的で、サヴィニャックのアートにはいつまでも古さを感じさせない魅力がある。
1924年、ムートン・ロスシルド初のアーティスト・ラベルを、ポスター画家ジャン・カルリュが担当して以来70年が経過した。1999年ヴィンテージでは、もうひとりの巨匠ポスター画家サヴィニャックが登場し、実に原点回帰である。ムートンのシンボルである牡羊が、ウインクしながら後ろ足を蹴り上げる。元気いっぱいに千年紀の終了を告げ、我々を祝宴へと誘う。