フィリップ男爵から
強い意志とたゆまぬ実行力、旺盛な独立心と類い稀な予見力。フィリップ・ド・ロスシルド男爵は、長年にわたり(1922年〜1988年)夢を追いかけ夢を叶え、第一線で活躍しました。数々の功績の中には、ワイン業界に革命を起こすこととなる決断も含まれています。
1924年、フィリップ・ド・ロスシルド男爵はシャトー完全ボトル詰め(元詰め)システムの導入を決定します。これは、ボルドーにおける一大勢力であるワイン取引組織(ネゴス)に対抗して、グランクリュ所有者としての責任と権限拡大を意味していました。ワインは樽に詰められた状態でネゴシアン(ワイン商)へ出荷されていた時代のことです。
この決断にはワイン保管場所拡大の必要が伴いました。そこで1926年、ムートンが誇る「グラン・シェ」が建設されます。建築家シャルル・シクリスの作品です。 メドックの伝統に則り、1933年、フィリップ男爵はポイヤックの小さなワイン商社を買収します。現「バロン・フィリップ・ド・ロスシルド社」の前衛です。同社はムートン・カデ(1930年発売)を中心とするワイン生産・販売を事業とし、現在では、AOCボルドーワインの世界トップブランドに成長しています。
その後、ポイヤックの神聖なるテロワール上に位置する格付ワイナリー2軒を追加購入し、一族はムートンを取り巻く資産を拡大します。1933年にChâteau Mouton d’Armailhacq/シャトー・ムートン・ダルマイヤック(1989年にChâteau d’Armailhac/シャトー・ダルマイヤックと改名)、そして1970年にはシャトー・クレール・ミロンを購入しています。
長年にわたって(1922年〜1988年)夢を追いかけ夢を叶え、第一線で活躍。数々の功績の中には、ワイン業界に革命を起こすこととなる重大な決断も含まれています。
フィリップ男爵は、ムートン・ロスシルドの世界に芸術的要素を進んで取り入れます。まずは全長100メートルの「グラン・シェ」の建設です。傑作建築です。そして、1945年からは毎年、現代美術家がムートンのためにオリジナル作品を制作し、その年のワインラベルを飾っています。 1962年には、シャトー自体がボルドー地方における観光名所として生まれ変わります。「Musée du Vin dans l’Art(芸術の中のワイン・ミュージアム)」の誕生です。これはフィリップ男爵と2度目の妻ポーリーヌ夫人による立案で、グラン・シェに隣接する同美術館は、ブドウとワインをテーマとした様々な時代の優品を所蔵しています。1970年初頭には、見学者をお迎えするレセプションスペースおよびテイスティングルームを完備した「le Club」建物が増設されています。
20年間、フィリップ男爵はムートン・ロスシルドのイメージ向上に尽力し、プルミエ・クリュ・クラッセ(格付第一級)への昇格を実現しました。1973年、当時の農業大臣ジャック・シラク署名のデクレ制定により、ムートンは、本来属するべきエリート集団への仲間入りを公式に果たしました。
フィリップ男爵は、ボルドー最高級シャトーでのワイン造りを世界に広める立役者としても活躍します。晩年、1979年には、カリフォルニア州ナパ・ヴァレーの著名ワインメーカー、ロバート・モンダヴィ氏の協力を受けて、フランスとカリフォルニア初合作となる最高品質赤ワイン、オーパス・ワンが生まれます。植樹法、育成法、そしてアッサンブラージュに至るまで、ボルドー伝統の技術を用いて造られています。
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