ウィリアム・ケントリッジは、1955年、南アフリカのヨハネスブルグに生まれました。ムートンのラベル・コレクション初となるアフリカ大陸出身アーティストです。政治学、美術、そして演劇と、それらの融合からなる彼の経歴は、独自の趣向と才能とが多彩に入り交じるエクレクティックな作風に如実な影響を示しています。キャリアのスタートは地元で活動する役者および演出家として。その後も郷土に対する愛着はそのままに、アニメーション画像およびビデオ映像制作へと徐々に活動の場を広げます。木炭デッサンや黒厚紙を用いた切り絵を、多種多様な素材のスクリーンに投影あるいは貼付させ、それらフェーズを連続して重ねてアニメーション化するテクニックを生み出します。この表現技術は精巧さを増し、アーティストとしての名声を確固たるものとします。近代に自国が歩んだ暗い過去からインスピレーションを得ることも多く、「ポリティカル・アート」と自認すると同時に、作品にはユーモアとポエジーがあふれています。
1997年、ドイツ・カッセル市のドクメンタにおける展覧会成功を皮切りに、ヴェネチア・ビエンナーレからサンパウロ・ビエンナーレ、パリ・ルーヴル美術館からベルリンのマルティン・グロピウス・バウ、ニューヨークの MoMA からウィーンのアルベルティーナ美術館へと、彼の作品は数々の世界的アートスペースにて公開されています。
また、グラフィック作品、ビデオ映像、彫刻、コラージュ、パフォーマンス… ケントリッジは、日本の京都賞やスペインのアストゥリアス皇太子賞など、数々の国際的な賞を授与されています。ヨーロッパおよび北米地域においては、オペラ歌劇の演出家および舞台美術家としても才能をいかんなく発揮。2010年には、ゴーゴリの短編小説を基としたショスタコーヴィチのオペラ作品「鼻」を手がけ、ニューヨークをはじめ、フランス・エクサンプロヴァンス音楽祭でも大きな賞賛の的となりました。2018年には、第一次世界大戦時にヨーロッパ大陸にて動員されたアフリカ出身兵士を題材とした舞台作品「ザ・ヘッド・アンド・ロード(The Head and the Load)」がロンドンで上演され、絶大な成功を収めています。
ムートンのラベル作品に描かれたのは「バッカスの勝利」。ティツィアーノからマティスまで、巨匠たちの作品に登場する、酒に酔いしれる人々。彼らを想起させるシルエットが陽気にパレードする場面をとらえています。グランヴァンとは、そもそも悦びをもたらす源であり、文化的価値を形成する要素のひとつでもあります。それには敬意と節度が求められます… シャトー・ムートン・ロスチャイルドの2016年に対してはなおさらです!
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