シャトー・ムートン・ロスチャイルドは、ボルドー市北西、岬状にのびるメドックの淵に、90ヘクタールのブドウ畑を所有しています。メドック、in medio aquae、水に囲まれた土地。その名が示すとおり、東にはジロンド河口、西には大西洋。メドックのブドウ畑の歴史はローマ帝国の時代にまで遡り、現在はおよそ1万6500ヘクタールの作付面積を誇ります。全長80キロメートル、幅5〜10キロメートルの細長い帯状の土地にブドウ畑は広がり、傍を流れる河により、土壌下層部からの灌漑効果および寒暖差の調整効果が得られています。この地方はランドの松林北端に接して広がり、海洋性気候特有の温暖さを良好なバランスで享受することが出来ています。
「礫」で形成された土地。河原石や小石は、砂あるいは一部粘土と混じり合って太陽熱を吸収します。農業には適さないと言われる痩せたメドックのこの土壌は、ゆいいつ、世界的最上質ワインを生み出すためにあるのです。泥灰土石灰質の基盤上に、貧弱な礫の層が数メートルの深さにまで積もっています。エレガントで力強く、タンニン豊かな長期熟成向きの赤ワインに仕上がります。
この地方の地形は、標高40メートル以下の「なだらかな丘」の連続によって形成されています。丘と丘の間は低地で区切られており、土地にはゆるやかな傾斜があり、自然の状態で良好な水はけと日照が得られています。通常、最上質畑は丘の頂きに広がっており、いくつかの有名シャトーの名称の由来ともなっています。例えば、ムートンの名も、動物(羊)が本来の意味ではなく、古フランス語で小高い土地を意味する「motte」あるいは「mothon」から来ていると考えられています。同じく、ラフィットは「faîte(頂き)」、コス・デストゥルネルは「côte(坂)」に由来します。
他のワイン銘醸地同様に、地理的条件とミクロクリマ(微気候)の偶然の出会いによって、メドックでは、自然の恵みによる、実に多様な品質のワインが生産されています。一部は、メドック、オー・メドック、あるいはボルドーという地域名アペラシオンでの生産。一流ワイナリーの多くは、より名声の高い村名アペラシオンにブドウ畑を所有しています。マルゴー、サン・ジュリアン、サンテステフなどです。
村名アペラシオンの中でも、特に威光を放っているのがポイヤックです。ブドウ品種カベルネ・ソーヴィニヨンが輝く地。この品種は19世紀初頭にこの地方に導入されています。ポイヤックのアペラシオンは現在、1200ヘクタールの畑を含み、「メドックおよびグラーヴの格付第一級」全5軒のうち3軒はここポイヤックに位置しています。ラフィット、ラトゥール、そしてムートンです。1855年格付には、メドックのワイナリー60軒が登録されていますが、上記の誉れ高き3シャトーに加えて、その他15軒の格付シャトーがポイヤックにおいてワイン生産を行なっています。
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